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2016

私的・少女漫画考察 〜第一弾・ぼくの地球を守って〜

CATEGORYエンタメ
少女漫画


この記事 以降、過去の漫画を読み返しており、急にタイトルどおりの記事を書きたくなってしまった。


上の記事を読んでもらえばわかるのだが、わたしの好みはどちらかというと男性作家寄りだ。

しかも日常系よりは、壮大なスケールで描かれたもの(歴史やSF含む)が好みだ。



とはいえ、「少女コミック連載モノでもこれは特によかった」という女性作家の作品がいくつか存在する。

その中から、「ぼくの地球を守って」「星の瞳のシルエット」「動物のお医者さん」にしぼってテーマを進めてみたい。

(なぜこの3作品かというと、少女コミックで連載されていた漫画で完読したのがたまたまこの3つだったから。特に他意はありません)


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というわけで、まずは「ぼくの地球を守って」こと「ぼくタマ」から。


いうまでもなく、『花とゆめ』に連載された日渡早紀の大ベストセラーSF作品だ。

もう30年も前の作品だが、今読んでもストーリーに古さを感じさせず、個人的に好きな作品トップ10に入る漫画である。



プロットが最後の最後までピシッと綺麗に構成されており、そこに各キャラクターの心情や思惑が複雑に絡み合っていく。

前世と今世でキャラクターがかなり多いのに、キャラの描き分けもしっかりなされている。

約30年前にあれだけのクオリティを持った漫画が誕生していたことに、まず驚く。



そして日渡早紀最大の功績は、主人公の「小林輪」を生み出したことだろう。


小林輪



この記事 でも少し触れているが、「小林輪」は好きなキャラトップ3に入るほど魅了されたキャラだ。

(ある意味、この作者のせいで、わたしのショタキャラ好きは決定的なものとなってしまった)



作者自身も小林輪への思い入れは相当なものがあるようで、OVA化された際、「輪の声だけは自分で決めたい」とオーディションにみずから参加したそうだ。


ぼくタマの続編である「ボクを包む月の光」でも輪きゅん全開らしいので、作者自身も相当好きなキャラであるのは間違いない。

(わたしは続編はいっさい読んでいないので評価はできないけれど――)



作者自身が小林輪を愛したからこそ、あれだけ人を惹きつけるキャラが生まれたのだ。

逆に言えば、作者がキャラを愛せなければ、魅力的なキャラは生まれない。



小林輪は、ぼくタマの中で一貫して悪役を務めている。

作者によると、初期の頃は「輪なんて大きらいだ」という読者からのお便りがたくさん届いていたようなので(笑)、初期の輪がヒール役に徹していたのは事実だ。


しかし、作者はその力量で、ヒールキャラを周到に魅力的なキャラへと変えていく。

悪役キャラ(小林輪)に壮絶な前世の過去を背負わせ、その前世と戦い今でも苦しみもがいている姿を、読者に対して小出しにしていった。



前世でヒロインを凌辱した過去を思い出して表情を濁す輪

輪2

出典:「ぼくの地球を守って」3巻291ページ



このようなストーリーと絵を地道に積み上げた結果、連載終了時には、なんとファンレターの9割が小林輪になっていたそうだ。

それほど魅力を持ったキャラと言える。

これもすべて、作者の小林輪への愛ゆえだろう。




ストーリーもさることながら、ファンが唸ったのは各登場人物の複雑な人間関係だ。

そのゴチャゴチャとした関係性をたった1ページで表した、素晴らしいコマがある。



① 輪が春彦(黒髪)を無言で断罪するシーン

ストーリー1


② その輪を、「抜け駆けでヒロインと婚約しやがって」という目で見ている迅八

ストーリー2


③ その迅八のことが好きでたまらない一成

ストーリー3


④ 友人である桜は一成を心配している

ストーリー4


出典:「ぼくの地球を守って」3巻191ページ



このような複雑な関係性を、セリフ抜きのコマ割りだけで見せてしまうのがまたうまい。

日渡早紀という漫画家は、おそらくリアルの人間関係に対して相当センシティブな感性を持った人なのだろう。



それがわかるシーンがこちら。

家出した輪(=銀太)が浮浪者のブンさんに拾われる。


ブンさん

ブンさん2


出典:「ぼくの地球を守って」8巻166〜167ページ



これはおそらく作者の心の声なのだろう。

なぜそう言い切れるのかというと――ここで自分の話をするのは少々おこがましいのだが――わたし自身も昔はまったく同じことを考えていたからだ。


同じく昔より鈍感になってはいるけど、かねてより「他人の中にいてホッとできる」部分があった。


それこそ「ノルウェーの森」ではないが、

「あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くこと」、

そして「自分に同情するな」が、若い頃のわたしのテーマとなっていた。



今は処世術を学んでだいぶ楽にはなったけれど――それこそ昔のわたしは、白樺派を読んでさえハラハラと涙を流すような人間だった。

あまりにセンシティブすぎると、この世は生きにくい。

ブンさんのセリフはそれをよく表している。




「ぼくの地球を守って」は、壮大なストーリーに、恋愛要素と複雑な人間関係が絶妙に絡んだ名作だ。

なのに、なぜかOVAは6話までしか収録されていない。尻切れとんぼなのだ。



非常に、非常にもったいない。

理由はわからないが、時代が悪かったのだろう。

昔は今ほどアニメやマンガが世間の評価を得ていなかったし、テレビにまだまだ力があったから、アニメにまで予算を割いてもらえなかったのかもしれない。



ぼくタマのメディアでのこの見過ごされ方は、かつての「寄生獣」とダブるところがある。

あれもまた名作なので、(ハリウッドの権利の関係で?)最終的には現代によみがえってアニメ化&映画化という方向で救われたが、そこに至るまでやはり30年近くが経過している。


ぼくタマ、今からでもぜひ、全巻OVA化してほしい。


ファンは絶対買いますよ。

あんな名作を原作だけで埋もれさせておくのは非常にもったいない。


「進撃の巨人」のように、作り手がその作品の熱烈なファンなら、たとえアニメ化されても絶対にいいものができる。

ぼくタマが全巻OVA化されるまでわたしは死ねません。

(あ、実写化は……いいです、はい)



次回、いつになるかわかりませんが、「星の瞳のシルエット」「動物のお医者さん」についてもつらつら書いていこうと思います。





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